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海外事業

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事例① 西バルカン地域 中小企業メンタリングサービス構築・普及促進

業務の背景と全体概要

セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロは旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一部であったが、現在ではそれぞれが西バルカン諸国を構成する独立国となっている。旧ユーゴスラビアは多様な文字、宗教、言語を持つ多民族国家であり、1つの連邦、2つの文字、3つの宗教、4つの言語、5つの民族、6つの共和国、7つの国境を持つと表されるように、世界において最も複雑性を抱えた国家であった。この複雑性は分裂後においても各国に引き継がれ、政治・経済・宗教・民族など、国家を構成するあらゆる面に大きな影響を及ぼしている。

図:プロジェクト対象国及びその民族分布

西バルカン諸国の経済は99%を中小零細企業が占めており、地域雇用の創出、地域経済の発展を実現するためには中小零細企業が存続・発展することが最重要課題とされている。各国はEUの政策・制度を踏まえて中小企業の競争力強化を目指した政策・制度の整備を進めていたが、支援体制には脆弱さが否めず、支援メニューにも限界があった。特に西バルカン諸国における中小企業の活動は「複雑性」へ大きな配慮が必要であり、通り一辺倒な支援施策は実効性を持たないという問題を抱えていた。
そのような問題に対し日本政府は日本が得意とし、長年に渡って培ってきた経営指導員制度、中小企業への直接的なアドバイザリー制度のノウハウを活用し、西バルカン諸国の中小企業振興を支援してきた。
JICAによる本プロジェクトでは、包括的な経営指導を行うメンター(公的な経営指導員)を養成し、全国の中小企業経営者に寄り添うメンタリングを提供することで、中小企業及び経営者を育成し、対象国全体の経済振興へ繋げることを目指した。

業務内容

1.標準メンタリングサービスの構築

メンタリングサービスの標準プロセス、標準ノウハウを設計し、標準メンタリングサービスを開発した。本内容に基づきメンターへのトレーニングプログラムが開発されると共に、メンターの資格制度等が設計された。それにより、全てのメンターが標準形のメンタリングサービスを提供することを可能とした。

2.メンタリングサービスのサービス提供体制の構築

メンタリングサービスは最終的に各国の全エリアをカバーしたネットワークを構築することが必要である。各国の事情を踏まえ、国別に目標設定し、ネットワークの土台を構築した。既にサービス提供が開始されていたセルビア国では地域開発エージェンシーをネットワーク化し、全国をカバーする体制を構築した。一方、新制度の導入期にあたるボスニアヘルツェゴビナではサラエボ経済地区にて、モンテネグロではポドゴリツァにてサービス提供体制を構築し、有効性のテストを実施した。

3.制度設計者の日本への招致と訓練

各国における制度設計へ影響力を持つ人物を日本へ招致し、日本における中小企業振興施策、中小企業支援スキームを直に学ぶ機会を創出した。政府系中小企業支援機関を視察する一方、地方における中小企業経営指導員による指導の視察、活躍する中小企業の視察等を行った。

成果

西バルカン諸国におけるメンタリングサービスの標準形を確立

欧州地域では専門家による中小企業へのアドバイザリーサービスが公的支援施策として時折提供されている。しかし、各専門家のノウハウ及び提供するサービス内容は不明であり、政府としてその品質とコンテンツが管理できないという大きな問題を抱えていた。それに対し、本プロジェクトではメンタリングサービスのプロセス及びノウハウに標準形が示され、全メンターが同内容を一定品質で提供する体制を構築することに成功した。それによって公的支援施策の中に「メンタリングサービス」を含めることが可能となった。

また、標準メンタリングサービスは「標準メンタリングガイドライン」として、各国のメンタリングサービス制度は「標準メンタリングサービス制度構築ガイドライン」として明文化され、各国の経済省をはじめとする中小企業振興を担う中核部署へ共有された。その後、本メンタリングサービス制度は各国の中小企業振興の重要施策として認知され、現在では全ての国の「中小企業振興政策文書」において「中核的施策」と位置付けれ、活発に運用されている。